「忘れることの自覚がない」…3

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認知症かどうかを考えるとき、忘れることの自覚があるかないかが目安となります。しかも、ついさっきのことを覚えていないかどうかです。いっしょにいる家族は、最初、これを信じられません。さっきお昼ご飯を食べたばかりなのに、平気な顔をして「お昼まだ?」と聞くのです。おかしいと思う前に「さっき食べたばかりなのに、なんでそんなこと言うの!」とつい怒ってしまいます。これでは認知症の人がかわいそうです。自分は何も怒られるようなことはやっていません。

ただ、本当に食べていないと思っているのですから。食べたことをすっかり忘れているだけです。同じようにして、この頃に物とられ騒ぎが起こります。認知症の人は、自分にとって必要な物をだれかに盗まれているような気がしてならないのです。必要なものがつぎつぎとなくなっていくからです。「もの盗られ妄想」は、認知症に見られる症状としてよく知られています。自分でしまい忘れているだけなのですが、認知症の人にとっては必要なものがつぎつぎになくなっていると思えるのです。

なので、一番大事な財布などをしまっておこうと、どこかに隠します。すると、もう出てきません。認知症の本人にとってはなくなってしまったことになります。「誰かが盗んだのかもしれない」と思い、「盗んだにちがいない」という妄想になり、身近な人を「ドロボー」と責め立てることになり、家族にとってはとても困った症状の一つです。そのときに、やり玉に挙げられるのが、一番仲のよくなかった嫁になってしまうことが多くあります。また、夫婦関係がうまくいってなかった場合も、お互いを犯人扱いしてしまうことがあり、過去の人間関係が反映されているともいわれます。

逆に、自分にとって最も必要な人に限って責められる場合もあります。その他に「いじめられる」「嫌われている」「殺される」などの被害妄想や「夫が浮気をしている」嫉妬妄想などがあります。現実に「家族からいじめられている、助けて!」と交番に駆け込んだり、ヘルパーさんを夫の愛人と思い込んで酷い言葉を浴びせるなどの例はたくさんあります。なぜこのような妄想が認知症の人にみられるのでしょう。

妄想とは、現実にあり得ないこと真実と思い込み、周囲の人が否定して考えを訂正させようとしても訂正不可能な間違った考えのことを言います。すなわち、認知症の人が「もの盗られ妄想」を持ったときは、それをいくら否定しても、そんなことありえないと説明しても、その考えを決して変えることはありません。