「忘れることの自覚がない」…2

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認知症の場合は、忘れることの自覚がないほどに、しっかりとすべてを忘れているという言い方もできます。物忘れは、記憶の中の一部を思い出せないことを言います。あの人の名前が浮かばないなどです。お年寄りが「あれよあれ」とか「それそれ」とか、代名詞だけで会話している光景は良く目にします。

人の名前が思い出せなくても、以前に一緒にランチしたあの人、などとヒントがあれば思い出すことができます。通帳をしまい忘れても、「箪笥の引き出しにしまったよね」と言われると思い出せます。それが物忘れです。しかし、認知症では、「人に会ったこと」「引き出しにしまったこと」自体を忘れているので、人に教えられても思い出せないのが特徴です。この違いは記憶のどの段階に問題が起こるかによります。記憶には、1,覚える→2,蓄える→3,引き出す、という3つの段階があります。

加齢によるものは、3の引き出す機能が衰えて、頭の中の膨大な情報から、的確なものを呼び出せないのです。ただし記憶自体は残っているので、きっかけがあれば「あっ、そうだ!」と思い出せるのです。しかし認知症は、1,2にも障害が起こるので、記憶自体がなくなってしまいます。ある部分の記憶がすべて消えていますから、思い出せないということにはならないのです。思い出す記憶がまったくないわけです。

たとえば認知症の人がクリニックの外来を受診したとしても、医師になんと言われたかなど思い出すことはありません。クリニックを受診したこと自体を記憶していないのですから、思い出せるはずはなく、忘れたという気持ちにもなるはずがありません。これが認知症とふつうの物忘れの違いです。忘れることや忘れていることを自覚できないのが認知症です。しかも、表面的にはまったく正常です。顔つきが変なわけでもなく、話し方がおかしいわけでもありません。ですから、初対面の人は認知症の人と話してもまったく気づかないわけです。

しかし、認知症の人はその時に会ったことを覚えていませんし、それに話した内容も記憶していません。おそらく、そのときに会って話した人は、なにも覚えていないと言われると馬鹿にされていると感じるほどでしょう。