「新しいことほど忘れる」…3

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今やったことを忘れるためにできなくなることのひとつに、着衣、服を着ることです。スラックスの上にパンツをはいたり、あるいはパンツを頭にかぶったり、メチャクチャになります。認知症の症状に、それまで当たり前のようにできていたことができなくなる「失行」があります。

運動麻痺や知覚麻痺などなく、頭では理解しているのにもかかわらず、動作や行動ができなくなる状態です。ですから、お風呂に入ることができたとしても、出てきて服をきちんと着ることができなくなりますので、だれかが手助けする必要があります。その人の持っている能力を最大限に利用して、できることから始めます。

あらかじめ着る順番に用意するなど、着脱しやすいように工夫をし、やさしい言葉でゆっくり声掛けし、その人のペースに合わせて一緒に行うことです。毎回行っていると習慣を思い出すこともあります。たとえば、着る物の選択はできない人でもボタンをかけることができれば、ボタンをかけてもらう、袖を通すことしかできない人は、ボタンのないセーターやトレーナーを選ぶという具合に配慮が必要です。服の着方がわからなかったり、寒暖の判断があいまいなこともありますが、「冷えて風邪をひくかも知れない」など、根底には高齢者の物事に対する心配や用心深さがあることも知っておきましょう。

また、認知症の高齢者は、気に入ったものや行為は容易には変えられません。「いつもと同じ」は高齢者に安心感を与えるからでしょう。全く同じ服を数枚用意することで着替えができることもあります。そのような時には着る順番に重ねて置いたり、声掛けをしながらひとつずつ渡しましょう。着る順番が違って不恰好な時は、鏡の前に連れて行き「こうしたほうが似合いますよ」などと自分の姿を見せながら一緒に直してあげるのもひとつの方法です。

「失行」が進むと、お金の管理も難しくなり、一日のほとんどの時間、誰かの見守りが必要になります。でも、この場合は家族でなくてもだれかが見ていればいいわけです。このような状態でも、本人の感情は正常ですから怒ったり、なじったりされれば、本人の感情も傷つきます。つまり、それがくりかえされると、逆に本人が怒り出して暴言や暴行といった行動に出るのです。

これがいわゆる認知症の問題行動です。認知症の問題行動は、このようにまわりにいる人が認知症をよく理解しないために、認知症の人特有のおかしな行動に対してしかりつけたりすることが原因で起こるのです。怒ることが有効なのは、これから脳が発達していく子供に対してです。脳の機能がなくなってしまっている人に新しく物事を教えようとしても無理なことです。つまり怒っても無駄なのです。