部分浴とは、体の一部のみをお湯に浸ける入浴方法で、足浴・手浴・座浴などがあります。足浴は、足を清潔にするばかりでなく、足の疲れをやわらげたり、足先の血行を良くしたり、リラックス効果や安眠・快眠効果なども得られると言われています。介護の現場ではその有効性が評価され、病気や疾患によっては、ケアプランに組み込まれるほど体に有効な入浴方法として知られています。
≪足浴とは≫
・身体的な理由で全身浴が難しい方の入浴方法
全身浴に比べると心臓への負担が軽く、体力の消耗も少ないので、高血圧の方や、体力の少ない方に適した入浴方法といえます。
・足浴を取り入れる疾患・病気・理由
全身浴を拒否する、体の状態により全身浴が困難、など様々です。糖尿病の方には清潔と血流を良くするために足浴がすすめられています。
≪足浴の目的と効果≫
・下肢の皮膚を清潔に保ち、感染症を防ぐ
足は靴下に覆われているため、汚れが見えにくく不衛生になりがちです。洗うことによって爽快感を得られるばかりでなく皮膚を清潔に保つ目的があります。
・血行を良くして、血流障害を防ぐ
足は体の末端にある部位なので、血液が滞りやすい特徴があります。足を温めることで、全身の血行を良くし、むくみの改善にも役立ちます。
・リラックス効果や睡眠効果がある
筋肉の疲れの軽減や、痛みの緩和という効果も期待されます。足浴と同時にマッサージを施せば、さらにリラックス効果を高められるでしょう。
・足の状態を観察し、健康状態を把握する
体の末端ということもあり、じっくり見る機会が少ない部位です。足浴特有のメリットは、足の状態から健康状態を把握することができるという点です。
≪足浴する時の注意点≫
・被介護者の体を冷やさない
足浴は15分を目安に手早く行い、余分な体力を消耗させないために、汗をかかない程度の時間に収めましょう。足浴後は水気をしっかり拭き取ります。
・お湯の温度や力加減に注意する
湯温は38℃から40℃とされていますが、介護者の手と被介護者の足は感じる温度が異なります。洗うときは力加減にも注意し、こまめに声掛けをしましょう。
・時間帯に配慮する
昼間の気温が高い時間帯や昼寝前に行うと、体にかかる負担を軽減できます。寝つきを良くするために、就寝前もいいですが、食後すぐは避けましょう。
・足の状態をよく観察する
観察のポイントは、皮膚の乾燥・変色・痒み・痛みはないか、足全体の臭いはないか、爪の状態はどうかなどです。水虫や爪白癬なども注意深く観察します。
≪足浴の手順≫
1.被介護者に足浴する旨伝えて、同意を得てから始めます。
2.室温は22℃~24℃に設定し、周囲の環境を整えます。
3.上半身を起こせる場合は、ベッドに腰掛け足底部が床につくようにベッドの高さを合わせます。起こせない場合は、膝下にクッションを入れて体の安定を確保します。
4.足にお湯をなじませてから片足ずつゆっくりと浸水します。指の間や付け根は、洗い残しのないように丁寧に洗いましょう。
5.両足を洗い終えたら、ペットボトルに入ったかけ湯かけて、石鹸を流します。タオルで水分を拭き取り、保湿クリームを塗ったり、爪切りをしましょう。
6.最後に後片付けをして、床が濡れていないかどうかの確認をします。
≪被介護者に寄り添った足浴を≫
被介護者にとっても、介護者にとっても足浴には多くのメリットがあります。まず、被介護者は足浴の時間いっぱい介護者を独占し、自分だけの時間を作れることです。会話やコミュニケーションととりながら足浴を行えば、より一層信頼関係を深めることができるでしょう。