認知症の症状あれこれ・・・「認知症害(失認・失行)」

神奈川介護求人JOB(ジョブ)TOP › お役立ち情報 › 認知症の症状あれこれ・・・「認知症害(失認・失行)」

認知症の症状には、記憶障害や実行機能障害と相まって、視覚や聴覚に異常がないにもかかわらず、目の前にあるものや聞いたものが何であるか分からなくなる状態、失認があります。つまり、目や耳から入る情報が正しく認識されない状態です。

ある施設でのエピソードです。同じ施設に入所している男性を夫と人物誤認しているある女性は、その男性の徘徊にいつも寄り添って歩いていました。時には体を気遣ったり、優しく話しかけたりと。その男性は、視空間失認があり、時々手すりと自分との空間距離を間違えて、転びそうになることがありました。その時手を差しのべるのもその女性でした。あるとき、転びそうになったときかばいきれずに、二人とも転倒してしい、骨折という事故になってしまいました。視空間失認と人物誤認による悲劇でした。

また、梅雨の時期に晴天を願っててるてる坊主を、ボロ布で作ってつるしましたが、次の朝にはてるてる坊主はなくなり、一枚一枚丁寧にたたまれて、洗面所に置いてありました。時間の経過とともに、てるてる坊主の認識はなくなり、ただのボロ布だったのでしょう。 同じように、手足のマヒやふるえなどなく、つまり運動機能が損なわれていないにもかかわらず、目的の行動(意志的な行動を行うこと)が取れない状態を失行といいます。

例えば、食の失行では、目の前に配膳された食事を前に混乱することがあります。どうやって食べたらいいのかが分からないからです。箸を一本持って「どうすればいいの?」とか、一本で食べようとして「これでいいの?」と尋ねてくる状況です。同様に、スプーンの柄で上手に食べる人、手で食べる人などいろいろな人がいます。 また、靴下を手にはめたり、ズボンの上にパンツをはいたりするのは、更衣失行といいます。掃除機を持ったまま「何をするものなの?」と訊く主婦もいました。

これらの行動は、ご飯は箸で食べるもの、トイレは排泄するところ(手や顔を洗う人もいますから)、掃除機は掃除をするものという私たちの観念から逸脱しているようにみえます。汚い、分からなくなったと嘆かず、箸で食べたり、着替えする場面を見てもらうこと(モデル提示)で、認知症の人はできることが案外多いのです。それは、技の記憶があるからです。忘れていてもマネをしながら、学習することはできます。