介護されている高齢者は毎日の中で、食べることは楽しみの一つです。口からの食事は、視覚・嗅覚・味覚を刺激し、脳の働きを活性化します。また、唾液に含まれる酵素や抗体に、感染症予防や免疫向上の働きがあるため、口から食べることはからだの活性化にもつながります。
その1≪知っておきたい高齢者の特徴≫
適切な食事介助を行うためには、まず高齢者の食事の特徴を知っておく必要があります。
●やわらかいものを好む
高齢者は、歯や顎の力が落ちているため、しっかり噛まなくても食べられるやわらかい食材や料理を好むようになります。また、のどの筋力が衰え、飲み込む(嚥下)力も低下しているので、硬い食べ物はのどを通りにくくなります。これもまた、高齢者がやわらかいものを好む理由の一つです。
●乾燥したものは飲み込みづらい
高齢者は加齢とともに唾液の分泌量が減少し、のど周辺の筋力も衰えるため、パンやクッキー、サツマイモなど、パサパサした食材を飲み込みづらくなります。水気を多く含んだ食材やとろみのついた料理、油脂類を使った料理のほうがスムーズに食べられます。
●のどの渇きを感じにくい
高齢になると、自分でのどの渇きを感じにくくなります。そのため、高齢者が自ら水分を欲しがることが少なくなり、タイミングを失うと1日に必要な水分を摂取してもらうことができません。小まめに水分補給を促しながら、飲んだ量を確認し、十分な水分を摂ってもらうよう心がける必要があります。
●濃い味付けを好むようになる
加齢とともに味覚や嗅覚は衰えていきます。若い頃と比べて料理の甘さや辛さを感じにくくなるため、「味が薄い」と言って調味料を多量に使用する傾向があり、以前よりも濃い味付けを好んだりするようになります。
また、嗅覚が鈍くなることで、料理のおいしそうな匂いから食欲をそそられなくなり、食欲そのものが減退することもあります。
●胃もたれしやすい
胃粘液の分泌量の減少や、腸の運動能力の低下により、消化機能が衰え、胃もたれや便秘が起こりやすくなります。これらも食欲不振を招く原因となります。適切に食事介助を行うために、高齢者の食事の特徴を知っておきましょう。